禁止の麻雀を


 運動会でもその存在感を示した信介だが、誰しもが強い印象をもったのが、ギャンブル好きの信介である。とにかく勝負事が好きだった。将棋に始まった遊びは、トランプ、麻雀、パチンコ、競馬、とそのフィールドを広げていった。だが、信介は客観的にはこれらの遊びを通じて、友だちを得、交流を深めていった。客観的といったのは、ラグビー部に入るまで、家では、「友だちはいない」といい張っていたからである。

「信介、麻雀やらねぇか」

 邦彦はよくそうやって、自分の高校時代の同期生や、大学時代のクラブ、鉄道研究会の仲間が集まって囲む麻雀に信介を引き込んだ。富久家には「麻雀部屋」と称する八畳の和室が玄関横にある。信介はいつも自信満々に麻雀を打った。「こんなおじさんに、おれが負けるわけがない」というのが口癖だった。徹夜になり、目を真っ赤にして学校に行くこともたびたび。おじさんたちは土曜日が休みだから問題ないが、麻布は土曜日は休みではない。節子はそのことで邦彦に文句をいった。当然のことだ。

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